企業の人事・労務を担当している方に向けて、職場の安全衛生について解説していきます。
従業員の健康を守るため、安全衛生は重要なものです。企業規模によっては義務付けられているので、取り組まなければならないと考えている方も多いでしょう。しかし法律が関わってくることもあり、どのような対策を講じるべきかと悩む方も少なくありません。
今回の記事では、職場の安全衛生を進めるために必要な基礎知識をご紹介します。選任すべき役職や知っておくべき法律も解説しますので、参考にしていただければ取り組み方についておわかりいただけるはずです。
安全衛生とは?
「安全衛生」とは職場において従業員の健康と安全を維持し、労働環境の改善をはかる取り組みのことです。従業員は企業にとって業務を遂行してくれる大切な存在。そのため労働上の安全を守り、健康で働けるような環境を用意しなければなりません。
そして労働安全衛生関係の法令では、企業は従業員の労働災害や健康障害を防がなければならないと義務付けられています[1]。企業は従業員の健康と安全の維持のために、労働環境の改善をはかる義務を果たしましょう。
安全衛生に取り組む目的
それでは企業が安全衛生に取り組む3つの目的について解説します。
目的①事故や健康被害を予防する
まずは事故や健康被害を予防することです。職種によっては業務中に事故が起きたり、健康被害が生じたりする可能性もあるでしょう。企業にとって従業員は資産であるため、問題なく働いてもらえるように従業員の健康を守る必要があります。
良い環境で働けるようになれば、従業員の業務へのモチベーションも高まるかもしれません。ひいては企業の生産性向上、業績アップにつながる可能性も高く、事故や健康被害を予防できる環境を整えることは重要です。
目的②働きやすい環境を維持する
職場で安全衛生に取り組むふたつめの目的は、働きやすい環境を維持することです。事故や健康被害を予防できる環境を整えれば、比例して労働環境も向上されます。たとえば次のような改善策を講じることにより、労働環境が改善されるでしょう。
【改善策の一例】
- 作業環境を測り記録として残す
- 従業員の定期健康診断を実施する
- ストレス軽減措置をはかる
記録として残せば作業環境が変化したときに対応しやすくなるだけでなく、改善措置もはかりやすくなります。定期健康診断を行ったりストレス軽減措置をはかったりすることは、従業員の心身の健康を維持するため欠かせません。
以上のように職場の安全衛生に気を配ると、自然と従業員にとって働きやすい環境が整ってくるはずです。
目的③従業員の安全意識を向上させる
従業員の安全意識向上をはかることも目的のひとつと言えるでしょう。職場の安全衛生への取り組みは、企業側だけが行うものではありません。もちろん企業側の配慮も必要ですが、従業員が自ら危険を回避することも必要です。危険を予測できるようになれば、事故を回避しやすくなるでしょう。
そのためには従業員に「危険回避のための知識と技術」がなければなりません。マニュアルを準備して従業員への教育を徹底することにより、従業員の安全意識を向上させられます。結果的に「安全性の高い職場」を構築しやすくなるはずです。
近年の安全衛生の状況
近年における安全衛生の状況は「労働安全衛生調査(実態調査)」にまとめられています。令和5年度の結果を見ていきましょう。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.8 %[令和4年調査63.4%]となっている。 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」が65.0%[同63.1%]と最も多く、次いで「メンタルヘルス不調の労働者に対する必要な配慮の実施」が49.6%[同53.6]となっている。
産業保健の取組を行っている事業所の割合は87.1%となっている。 このうち、産業保健の取組内容(複数回答)をみると、「健康診断結果に基づく保健指導」が74.7%と最も多く、次いで「メンタルヘルス対策(相談体制の整備、ストレスチェック結果を踏まえた職場環境改善等)」が74.2%となっている。
労働の転倒を防止するための対策の取組状況をみると、「物理対策」では「設備・装備などの対策(職場内の手すり、滑りにくい床材の導入・靴の使用、段差の解消、照度の確保等)、整理・整頓・清掃の徹底など」に取り組んでいる事業所の割合が78.1%、「身体的要因を考慮した対策」では「骨密度、ロコモ度等のチェックによる転倒やけがのリスクの見える化」に取り組んでいる事業所の割合が6.6%、「転びにくい、又はけがをしにくい身体づくりのための取組(専門家による運動指導、スポーツの推進等)」に取り組んでいる事業所の割合が13.4%となっている。
陸上貨物運送事業の事業所のうち、「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に基づく措置に取り組んでいる事業所の割合は87.1%となっている。 このうち、取組内容(複数回答)をみると、「荷台からの墜落転落防止対策の実施(荷台への昇降設備やプラットフォーム等の設置等)」が76.1%と最も多く、次いで「荷役作業の安全衛生教育の実施」が66.8%となっている。
労働安全衛生法第57条の2に該当する化学物質を使用している事業所のうち、リスクアセスメントをすべて実施している事業所の割合は58.2%[同69.6%]、同条には該当しないが、危険有害性がある化学物質(労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づいてリスクアセスメントを行うことが努力義務とされている化学物質)を使用している事業所のうち、リスクアセスメントをすべて実施している事業所の割合は52.0%[同63.8%]となっている。
令和4年度よりも実施している企業の割合が減った項目もありました。しかし全体的に半数以上の企業がなんらかの形で職場の安全衛生を行っていると言えます。
令和6年における労働災害発生状況は、死亡者数が746人と前年に比べて1.2%減少。事故の種類においては「はさまれ・巻き込まれ」が1.9%増加したものの、「墜落・転落」は7.8%減、「交通事故(道路)」は16.9%減となりました。 職場の安全衛生を継続したことにより、事故率が低下してきた可能性も考えられるでしょう。
安全衛生に取り組むうえで重要なこと
事故を防ぐために役立つ安全衛生。これから取り組みたいと考えているなら、次の2つのポイントを意識しながら進めていくと効果的でしょう。
①災害が起こりやすい行動を知る
まずは災害が起こりやすい行動を知りましょう。労働災害が起こるにはなんらかの理由があるはずです。たとえば次のようなことが考えられます。
【災害が起こりやすい行動[2][3]】
- 従業員による建物の建設
- 設備や原材料による被害
- ガスや蒸気・粉じんの吸引による被害
- 作業方法の間違い
- 安全装置の調整ミス
- 合図や確認をせずに機械を動かすこと
- 指定方法以外での機械の使用
- 運転中の機械の掃除や修理
- 危険箇所・有害箇所への立ち入り
- 近道行動
- 運転の失敗
災害が起こりやすい行動を知れば、災害が起こる状況を想定したうえで対策ができるようになります。自社ではどのような災害リスクがあるか把握したうえで安全衛生に取り組むことが重要です。
②人の対応能力を認識する
取り組みのためには、人の対応能力を認識することも欠かせません。人には限界があります。たとえば全くミスをしないこと、重量物を継続的に運び続けること、高温に耐え続けることなどは対応が難しいケースの代表例です。 人が対応できる範囲は限られています。対応能力を無視した労働をしていると、身体を痛めたり怪我をしたりしてしまう確率が高まるものです。人の対応能力を正しく認識したうえで対策をすることが理想であると言えます。
安全衛生の基本ルール
職場の安全衛生に取り組むなら、まずは基本ルールを知っておきましょう。安全衛生には4つの基本ルールがあります。以下でご紹介するルールに沿って取り組みを進めてください。
ルール①作業手順を守る
ひとつめのルールは「作業手順を守ること」です[3]。労働環境における事故の原因としてあげられるのが、機械や設備を誤って使用することです。
たとえば機械や設備が稼働しているときに清掃を行ったり、異なる用途で機械を使用したりすることが考えられるでしょう。作業手順が守られていれば事故は起こらなかったかもしれません。うっかり手順を忘れてしまい、無意識に危険な行動をしてしまうことも。
そこでぜひ、していただきたいのが「作業手順書」の作成です。作業手順書にしたがって労働をすれば、事故が発生する確率は低減されるはずです。また作業の効率性も高まり、企業の経営にも良い影響を与えるでしょう。安全衛生に取り組むなら、まずは作業手順書を作成して、従業員が作業手順を守れる環境を作ってください。
ルール②防護設備や安全装置を正しく使用する
職場における安全衛生においては、「防護設備や安全装置を正しく使用すること」も基本的なルールです。安全装置や防護設備はその名のとおり、使用する人の安全を守るためのもの。しかし正しく使用しなければ効果が低くなり、労働災害につながってしまう恐れもあります。
たとえば排気ダクトを外したり、排気を止めたりしてしまうと現場に有害物質が広がることもあるでしょう。機械についているカバーを開けたまま使用していると、カバーとしての意味がなくなってしまいます。危険な物質や油が飛散するかもしれません。
防護装置や安全装置を正しく使用することは、安全衛生における基本と言えます。正しい使用方法を学ぶことはもちろん、業務を始める前に正常に稼働するかを確認することが重要です。
ルール③通行ルールを守る
続いての基本ルールは「通行ルールを守ること」です。労働災害の理由として多いとされているのが、通行ルールを守らないことによる事故[3]。たとえば近道をしたり、決められた通路を通らなかったり、走ったりすることによって事故が起こることは少なくありません。
通路にはフォークリフトや運搬車が通っていることもあります。一般的な道路と同じように、通行ルールを守らなければ事故に遭う確率が高まります。
曲がるときや通路に出るときは停止して、安全を確認しましょう。決められた通路を通るようにすることも大切です。通行ルールを守ることにより事故のリスクは軽減されます。
ルール④適切な服装と保護具を着用する
職場の安全衛生における基本ルールのひとつであるのが、適切な服装と保護具を着用することです。危険な作業をするときの服装は、従業員をリスクから守るために必要なものであると認識してください。
作業服はもちろん、帽子やヘルメット、保護メガネも必要となるかもしれません。作業を安全に行えるようにするために必要なものです。
適切なサイズであるかどうかの確認も重要です。サイズが小さすぎると動きにくくなることがあるため、適切なサイズのものを着用するようにしましょう。
知っておきたい安全衛生に関する法律
最後に職場の安全衛生に取り組みたいと思われている方に向けて、安全衛生に関する法律をご紹介します。取り組みを始めるなら、まずは関連する法律について知っておきましょう。
労働安全衛生法によって選任する必要がある役職
職場の安全衛生に関する法律はさまざまですが、取り組みを始めるならまずは選任する必要がある役職を準備してください。安全衛生管理体制を整備するには、管理者などの役職を専任しなければなりません。次のような役職がそろっていれば、万全の体制で取り組みに臨めるでしょう。
①総括安全衛生管理者
「総括安全衛生管理者」は労働安全衛生法において、選任が義務付けられている役職のひとつです。職場における安全衛生を始めるなら14日以内に選任して[4]、労働基準監督局にその旨を報告しなければなりません。
統括安全衛生管理者の職務は次のとおりです。
安全管理者、衛生管理者などに指揮するとともに、次の業務を統括管理することとされています。 ア 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること イ 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること ウ 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること エ 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること オ その他労働災害を防止するため必要な業務 (ア) 安全衛生に関する方針の表明に関すること。 (イ) 危険性又は有害性等に調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。 (ウ) 安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
安全衛生管理を統括する役割を担っており、最も重要な役職であると言えます。まずは統括安全衛生管理者を選任することから始めましょう。
②安全衛生推進者・衛生推進者
「安全衛生推進者・衛生推進者」も選任が義務付けられている役職です[5]。業種によっては、常時10人以上50人未満の従業員を雇用する事業所において必要とされます[5]。
選任するには一定の要件を満たす必要があり、安全衛生推進者養成講習や衛生推進者養成講習を修了していなければなりません。また資格を保有していることも必要要件です。
施設や設備を点検したり正しく使用されていたりするかを確認すること、安全衛生教育を行うことなどが主な業務内容[5]。10~49人の従業員を雇用している企業であれば、安全衛生推進者・衛生推進者も選任してください。
③安全管理者
条件にあう場合、「安全管理者」の選任も義務化されています。労働安全衛生法第11条によって定められている義務です。選任が必要となる業種は、常時雇用者が50人以上である次のような業種とされています。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業
また雇用者の人数によっては、その他の業種でも選任が必要となる場合があります。義務であるため、自社の業種が該当するかどうかを確認して、必要であれば選任してください。
④衛生管理者
「衛生管理者」も同様に、選任が義務付けられている役職です。常時50人以上の雇用者がいるなら、すべての事業所にて選任しなければなりません。そして雇用者の人数によっては、複数の衛生管理者が必要となります。
事業場の規模(常時使用する労働者数) 衛生管理者の数 50人~200人 1人 201人~500人 2人 501人~1,000人 3人 1,001人~2,000人 4人 2,001人~3,000人 5人 3,001人以上 6人
事業場の規模(常時使用する労働者数) |
衛生管理者の数 |
50人~200人 |
1人 |
201人~500人 |
2人 |
501人~1,000人 |
3人 |
1,001人~2,000人 |
4人 |
2,001人~3,000人 |
5人 |
3,001人以上 |
6人 |
さらに選任する人材には、保有すべき免許や資格などが求められます。必要となる免許等は業種により変わるため[4]、職場の安全衛生への取り組みを始める前にチェックしておきましょう。
⑤作業主任者
「作業主任者」は労働安全衛生法第14条により、作業区分に基づいて選任が義務付けられる役職です[6]。次のような役割を果たします。
【作業主任者の役割[6]】
- 作業を直接指示すること
- 使用される機械の点検を行うこと
- 機械にトラブルがあった際に必要な措置を取ること
- 安全装置が正しく使用されているか監視すること
作業主任者は作業や機械の稼働に直接関わる役職です。安全に作業を進めるうえでは、欠かせない役割だと言えるでしょう。
⑥産業医
「産業医」は労働安全衛生法第13条にて必要であると定められている役職です[4]。必要性は事業所の規模によりますが、一定規模以上の職場であれば、医師の中から産業医を選任するようにしてください。
産業医の役割は従業員の健康管理です。従業員の健康を守るための措置や勧告を行ったり、定期巡視して職場の衛生状態や作業方法について必要な措置を検討したりする役割を果たします。
労働安全衛生法で義務付けられること
続いては労働安全法によって義務付けられていることについてご紹介していきます。義務付けられているのは役職の選任だけではありません。職場で安全衛生に取り組むのであれば、次にご紹介する10の項目を実施してください。
①衛生委員会・安全委員会を開催する
職場の安全衛生管理を実施するなら、衛生委員会や安全委員会を開催してください。委員会の開催は安全衛生に関する審議を行い、意見を交わす場です[7]。また安全衛生に対する教育を行い、就業制限や健康診断、作業環境測定の実施も行います。
衛生委員会や安全委員会は、定期的に職場の安全衛生状況を見直す場であるとも言えるでしょう。職場における安全衛生の基本として定期的に開催しましょう。
②健康診断を実施する
健康診断は従業員の健康を守るため欠かせないものです。常時雇用している従業員に対して実施してください。定期健康診断は年に1回行うようにしましょう[7]。
③安全衛生教育を実施する
雇用している従業員に、安全衛生教育を実施することも職場の安全衛生における基本です。従業員に安全衛生に関する知識や技術がなければ、企業側が努力しても事故が起きてしまう可能性が高まります。
まず雇用する際に教育を行い、作業内容が変更したときにも全従業員に対して安全に関する周知が必要です[7]。特に危険性が高く有害な業務を行っている事業所であれば、業務に従事する前に特別教育を行いましょう[7]。
安全衛生教育の実施は、従業員に安全な働き方を教育するためのものです。事故やリスクを回避するために必ず実施してください。
④労働災害防止措置を講じる
主に安全衛生推進者・衛生推進者によって行われるのが労働災害防止措置です。従業員の健康障害や事故を防ぐための措置を行ったり、安全・衛生のための教育を行ったりすることを指します[5]。またもしも労働災害が起きてしまった場合、原因を調査し、再発防止策を練ることも必要な措置のひとつです[5]。 職場の安全衛生は労働災害を防止するための取り組みであるとも言えます。労働災害を防ぐためにはどのようなことができるか、必要な措置を講じることが重要です。
⑤危険な作業で必要な機械の届出をする
機械で危険性の高い作業を行うのであれば、必要な機械の届け出をしてください。労働安全衛生法によって、届け出が必要な機械が定められています。届け出が必要となる機械は次のとおりです。
○ボイラー(溶接検査、構造検査、使用検査)、第一種圧力容器(溶接検査、構造検査、使用検査)、移動式クレーン(製造検査、使用検査)、ゴンドラ(製造検査、使用検査)の届出 →設置場所を管轄する都道府県労働局(労働基準部安全主務課) ○ボイラー(上記以外)、第一種圧力容器(上記以外)、第二種圧力容器、小型ボイラー、小型圧力容器、クレーン、移動式クレーン(上記以外)、デリック、エレベーター、建築用リフト、ゴンドラ(上記以外)の届出 →設置場所を管轄する労働基準監督署
上記のような機械を使用する際には届け出が必要となります。届け出る場所は機械の種類によって変わるため、自社内に届け出が必要となる機械があるかどうかを確認し、どこに届けるべきか判断してください。
⑥危険作業と有害物質に適切な対応をとる
危険作業と有害物質に対して適切な対応をとることは、従業員の健康を守る第一歩だと言えるでしょう。適切な対応とは、適切に作業を行える従業員を配置することや、作業に適した環境を整えることです。
たとえばクレーン運転などの作業は、資格保有者が行わなければならないとされています。爆発性・発火性・引火性のある危険物を取り扱うには、安全に作業できる環境が必要です。
事故や労働災害を防ぐには、適切な人員を用いて、適切な環境で作業を行うよう指示をすることが重要となります。
⑦リスクアセスメントを実施する
職場で安全衛生への取り組みを行うなら、リスクアセスメントを実施することも必要でしょう。リスクアセスメントとは、危険性や有害性を予測し、リスクを取り除くための手順のことです。
危険性・有害性の高い業務があるなら、まずリスクのもとを特定してください。そしてリスクの高さを評価して、リスクが高いと思われる箇所に対して優先的に対策を行っていきます。もし被害があった場合に重篤となる業務、発生リスクが高い業務を優先すれば、より安全性の高い職場を構築できるはずです。 職場の安全衛生対策を行うなら、リスクアセスメントを実施すれば成功しやすくなります。
⑧定期自主検査を行う
危険性の高い特定の機械が設置されている場合、定期的に自主検査を行ってください。たとえばボイラーや第一種圧力容器などが対象となるでしょう。点検を行ったら結果を記録・保管します。
ただし機械によっては、資格を保有している従業員による特定自主検査が必要となることも。設置されている機械の種類ごとに、どのような自主検査を行うべきか把握しておくことも必要です。
⑨職場環境を整える
続いては職場環境の整備についてです。従業員にとって働きやすい職場を目指すことは、職場の安全衛生において労働災害予防とともに重要なポイントとなります。
たとえば作業に適した照明を設置すること、騒音や振動を低減させる措置を取ることなどです。また休憩設備を整えたり、カウンセリングルームを設置したりすることも職場環境の整備として数えられます。
⑩ストレスチェックを実施する
労働安全衛生法では、従業員のストレスチェックが産業医の職務のひとつとして定められています[8]。雇用している従業員数が50人以上であれば、ストレスチェックをして結果によっては面接指導を行わなければなりません[8]。50人未満の従業員しか在籍していない職場であれば努力義務とされていますが、従業員の心の健康を考えれば実施すべきでしょう。
ストレスチェックの実施状況は、年に1回、労働基準監督署に報告しなければなりません。身体の安全だけでなく心の安全も守るため、実施できる体制を整えましょう。
労働安全衛生法に違反するとどうなる?
労働安全衛生法に違反すると、懲役もしくは罰金が課される可能性があります。懲罰の重さは違反内容により変わりますが、最大で3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金が課せられることも。
労働安全衛生法を遵守することは従業員の健康や命を守ることと同義です。違反のないように取り組みを進めていきましょう。
職場の安全衛生は法律を把握したうえで取り組みを
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、職場の安全衛生への取り組み方がご理解いただけたと思います。
安全衛生への取り組みは必要なことですが、まずは関連する法律を把握したうえで始めることが重要です。 HRプラス社会保険労務士法人では企業規模に関わらず顧問に対応いたしております。職場の安全衛生への取り組みを進めたいけれど法律関連への知識がないとお困りでしたら、ぜひわたくしどもにご相談ください。 [1]
[2]
[3]
[4]
参照:東京労働局:共通 3 「総括安全衛生管理者」 「安全管理者」 「衛生管理者」 「産業医」のあらまし
[5]
参照:厚生労働省:(PDF)-安全衛生推進者・衛生推進者を選任していますか-
[6]
[7]
[8]
参照:厚生労働省:改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」の具体的な運用方法を定めた省令、告示、指針を公表します
コラム監修者

特定社会保険労務士
佐藤 広一(さとう ひろかず)
<資格>
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号
東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号
<実績>
10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証グロース:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社Voicy監査役
経営法曹会議賛助会員
<著書・メディア監修>
『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演