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公開日:2026.04.13

更新日:2026.04.13

フリーランス新法でハラスメント対策が義務化?相談環境と規定の作り方

フリーランス新法では、発注者に対しフリーランスへのハラスメント防止措置が義務化され、方針の明確化、相談窓口の設置、事案発生時の迅速な対応などが求められます。
雇用関係がない取引では力関係の偏りから問題が潜在化しやすいため、企業側の実務整備が重要です。

本記事では、第14条のポイント、発注企業が取るべき3つの措置、起こりやすい類型、契約書・社内規程と研修の作り方、被害時の記録方法と公的窓口の活用までを解説します。

フリーランス新法におけるハラスメント対策義務化の全体像

フリーランス新法では、法第14条に基づき、特定業務委託事業者にフリーランスへのハラスメント対策の体制整備等が義務付けられています。
方針の明確化や相談体制の整備など、取引における責任範囲が具体化された点が重要です。

本項では制度の全体像を整理し、続く見出しで制定背景と条文の要点を解説します。

フリーランス新法が制定された背景と施行の目的

制定の背景には、業務委託で働く人が労働法の保護対象外となりやすく、不当な言動や一方的な条件変更に直面しても救済を求めにくい実情がありました。
くわえて、相談先が分からず問題が表面化しない事例も指摘されてきたのです。

新法は取引の適正化と就業環境の整備を目的とし、発注者の責務を明確化することでトラブルの未然防止と早期解決を図ります。

第14条が規定するハラスメント対策の重要性

第14条は、発注者にハラスメント防止の方針策定や周知、相談窓口の設置、迅速かつ適切な対応体制の構築を求める中核規定です。
相談を理由とする不利益取扱いの防止や、プライバシーへの配慮も重要な要素とされています。

これらを実務に落とし込むことで、被害の未然防止と拡大防止が期待されます。

発注企業に求められる3つのハラスメント対策措置

フリーランス新法の施行により、発注企業にはハラスメント防止措置が実施が義務付けられました。
これまで曖昧になりがちだったフリーランス保護の基準が整理され、企業側の対応責任が明確化された点が大きな特徴です。
対策を怠れば法令違反や信用低下につながるおそれもあるため、具体的な実務対応が不可欠です。

本項では、企業が優先的に取り組むべき三つの措置を順に解説します。

1.ハラスメント禁止方針の明確化と社内外への周知

最初の対策は、フリーランスに対するハラスメントを許さない方針を明確に定め、社内外へ周知することです。
文書や規程に具体的な禁止行為を明記し、経営層から現場担当者まで理解を徹底することが重要です。

あわせて、契約書やガイドラインを通じてフリーランスにも方針を伝えることで、取引開始時点から共通認識を形成できます。

方針の明確化と継続的な周知は、誤解やトラブルを未然に防ぐための基盤となります。

2.フリーランス가利用できる相談窓口と対応体制の整備

次に求められるのが、フリーランスが安心して利用できる相談窓口と実効性ある対応体制の整備です。
専用の連絡手段を設け、相談内容を適切に管理しながら迅速に対応できる仕組みを構築する必要があります。

相談を理由とする不利益取扱いを防ぐルールを明確にし、担当者への研修も実施すると運用の質が高まります。

窓口と体制を整えることは、信頼関係の維持と問題の早期解決に直結します。

3.事案発生時の迅速な事後対応とプライバシー保護

万一事案が発生した場合には、速やかな事実確認と適切な措置が不可欠です。

関係者への聞き取りを慎重に行い、被害者の意向や安全に配慮しながら対応を進めます。
同時に、相談内容や個人情報の管理を徹底し、情報漏えいを防ぐ体制を維持することが求められます。

調査結果や対応方針を丁寧に説明することで再発防止につなげ、安心して取引できる環境を確保しましょう。

フリーランスに対するハラスメントが多発する原因と種類

フリーランスに対するハラスメントが生じやすい背景には、雇用関係がないことによる立場の不均衡や契約継続への不安が影響しています。
発注者との関係が個別契約に基づくため、問題が表面化しにくい構造もあります。

本項では発生要因と代表的な類型を整理し、具体的な実態を確認しましょう。

発注者とのパワーバランスから生じるパワハラの実態

発注者が業務量や報酬、契約継続を左右できる立場にあることから、フリーランスは理不尽な要求を拒みにくい状況に置かれがちです。
納期や業務範囲の一方的な変更、報酬減額の通告など、取引適正化の規定違反となり得るほか、状況により不利益取扱いに該当し得ます。

契約関係が不安定な分、従業員以上に生活や信用へ影響が及ぶ可能性もあるでしょう。
力関係の偏りが、パワハラを生みやすい構造的要因となっています。

セクハラや不機嫌ハラスメントなど多様化する問題行動

近年はセクハラに加え、不機嫌ハラスメントなど精神的圧力を伴う行為も問題視されています。
性的な言動や過度な私的干渉、精神的な攻撃、人間関係からの切り離しは、業務上の適正範囲を超える可能性があります。
受け手が恐怖や不快感を抱く状況が続けば、就業環境の悪化につながるでしょう。

多様化する問題行動を正しく理解することが、早期対処と再発防止の前提となります。

相談環境の構築と社内規定の具体的な作り方

フリーランス新法の施行により、発注企業には相談環境の整備と社内規定の明確化が求められています。
従業員とは異なる立場にあるフリーランスが安心して取引できるよう、制度面と運用面の両方を整えることが重要です。
契約書の見直しや研修体制の構築を通じて、実効性ある仕組みを整備する必要があります。

本項では、具体的な整備方法を順に解説します。

業務委託契約書へのハラスメント防止条項の組み込み

業務委託契約書にハラスメント防止条項を盛り込むことは、発注者とフリーランス双方の安心につながります。
禁止行為の明示や事案発生時の対応手順、相談窓口の情報を記載することで、トラブル時の判断基準が明確になります。

あわせて、プライバシー保護や不利益取扱いの禁止を明文化することで実務上の信頼性も高めましょう。
契約段階で具体的に取り決めることが、予防と迅速対応の基盤となります。

従業員向けコンプライアンス研修の実施と意識啓発

規定を形骸化させないためには、従業員向けの研修と継続的な意識啓発が欠かせません。
ハラスメントの定義や具体例、フリーランスとの適切なコミュニケーション方法を共有することで、現場での誤解や不適切な言動を防げます。

定期的な研修やチェック体制を設けることで理解を定着させ、問題の芽を早期に摘み取ることが可能です。
実践的な教育の積み重ねが、健全な取引環境の維持につながります。

ハラスメント被害に遭ったフリーランスの対処法

フリーランスとして働く中でハラスメント被害に遭った場合は、感情的にならず段階的に対応することが重要です。
新法により発注者にも防止措置や相談対応義務が課されているため、泣き寝入りする必要はありません。
証拠の確保や公的窓口の活用を通じて、客観的に状況を整理することが解決への第一歩となります。

本項では、具体的な行動手順を解説します。

客観的な証拠を集めて正確な記録を残す手順

被害を受けた際は、まず客観的な証拠を収集し、時系列で記録を残すことが重要です。
その際はトラブル防止の観点から、電子メールやSNS等の記録が残る方法でやり取りすることが望ましいとされています。
クラウド等を用いる場合は、スクリーンショットを撮っておくとよいでしょう。

さらに日時や場所、関係者、発言内容を具体的に整理しておくことで、後の相談や申告が円滑になります。
データは消失を防ぐため複数箇所に保存し、改ざんを疑われない形で保管してください。

フリーランス・トラブル110番や行政機関への申告方法

公的な相談窓口を活用することも有効な選択肢です。
フリーランス・トラブル110番や労働局などでは、契約やハラスメントに関する相談を受け付けています。

相談時には被害内容と証拠を整理して伝えることで、具体的な助言や対応方針を得やすくなります。
専門家や行政機関の支援を受けることで、問題の早期解決と再発防止につなげることが可能です。

まとめ:フリーランス新法で安心な相談環境を整えよう

フリーランス新法では、発注者にハラスメント防止の方針策定・周知、相談窓口と対応体制の整備、事案発生時の迅速対応とプライバシー配慮が求められます。
実務では、禁止行為の定義や連絡先、調査手順、不利益取扱いの禁止を社内規程と業務委託契約書に落とし込み、現場で迷わず動ける状態にすることが重要です。
加えて、従業員向け研修でリモートでも起こり得る言動リスクを共有し、記録・報告ルートを定期的に点検しましょう。

万一被害が起きた場合は、メールやチャットなどの証拠を保全し、フリーランス・トラブル110番等の公的窓口も活用して早期解決と再発防止につなげてください。

コラム監修者

特定社会保険労務士

佐藤 広一(さとう ひろかず)

お問い合わせ

<資格>

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号

東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号

<実績>

10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証プライム:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社エージェントグロー 取締役
経営法曹会議賛助会員

<著書・メディア監修>

M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上

TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演