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公開日:2026.09.17

更新日:2026.09.17

就業規則の作成義務とは?対象企業や記載事項・届出方法を解説

就業規則は、労働時間や賃金、休日などのルールを明確にし、労使間の認識をそろえて安定した労務管理を支える重要な文書です。 一方、作成義務の対象となる事業場や記載事項、届出・周知の方法を正しく理解していないと、法令違反や労使トラブルにつながるおそれがあります。

本記事では、就業規則の作成義務が生じる条件から必要な記載事項、効力が発生するタイミング、違反時の罰則、作成・見直しを進めるコツまで詳しく解説します。

就業規則の作成義務とは?

就業規則は、労働時間や賃金、休日、服務規律など、職場における労働条件やルールを明確にするための文書です。 また、労働基準法では常時10人以上の労働者を使用する事業場に作成と届出が義務付けられており、企業は対象となる条件を正しく理解する必要があります。

ここでは、就業規則の作成義務を理解するうえで押さえておきたい基本的な役割と、整備する目的について解説します。

就業規則が果たす役割

就業規則は、労働時間や賃金、休日、退職などの労働条件に加え、職場で守る服務規律などを明確にする役割を担います。 内容を労働者へ周知することは、各自が働く条件やルールを正しく把握し、労使間の認識のずれを防ぐために不可欠です。

特に、社会の常識や法律に沿った適切な規則であれば、その内容がそのまま労働契約の基準となります。 そのため、就業規則は単なる社内ルールではなく、安定した労務管理を支える重要な文書として必ず整備してください。

作成することで得られるメリット

就業規則を作成するメリットは、労働時間や休暇、賃金、服務規律などの基準を明文化し、労使双方が共通のルールを確認できることです。 判断基準が明確になれば、同じような事案への対応に一貫性を持たせやすくなり、労使トラブルの予防にもつながります。

また、従業員が自らの労働条件や必要な手続きを確認しやすくなる点も利点です。 さらに、会社側も日常の労務管理における判断のよりどころとして活用できるため、職場のルールを適切かつ継続的に運用しやすくなります。

就業規則の作成義務がある企業の条件

就業規則の作成義務は、企業の規模ではなく、各事業場で常時使用する労働者の人数によって判断されます。 また、対象者には正社員だけでなく、一定の条件で勤務するパートやアルバイトなども含まれる点に注意が必要です。

ここでは、作成義務が生じる事業場の基準や労働者数の考え方、10人未満の職場で作成する意義について解説します。

常時10人以上を雇用する事業場が対象

就業規則の作成義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に生じます。 ここでいう「常時10人以上」とは、日々の出勤人数にかかわらず、常態として雇用している労働者が10人以上いる状態を指します。

そのため、一時的に人員が増えて10人以上になった場合でも、常態として10人未満であれば、作成義務の対象にはなりません。 また、人数は企業全体ではなく事業場単位で判断するため、それぞれの拠点で常時雇用している労働者数を確認する必要があります。

パート・アルバイトも人数にカウント

就業規則の作成義務を判断する際は、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどの非正規労働者も人数に含めます。 短時間勤務や異なる雇用形態を理由にして、これらの労働者をカウント対象から除外することはできません。

また、勤務形態や労働条件が正社員と異なる場合は、パートタイム労働者向けに別規程を整備するのが効果的です。 そのため、人数を確認する時は雇用形態だけで誤認判定をしないよう、事業場で常時使用する労働者の実態を正しく整理してください。

事業場ごとに人数を数えるルール

就業規則の作成・届出義務は企業全体ではなく、原則として事業場ごとに判断します。 事業場とは、工場や店舗、営業所など、場所的に独立して事業が行われている単位を基本として考えるものです。

そのため、本社と営業所を合わせれば10人以上でも、それぞれが独立した事業場で常時10人未満であれば、各事業場に作成義務が生じない場合があります。 ただし、拠点の規模や業務上の独立性によって事業場の判断が異なることもあるため、所在地が別という理由だけで機械的に分けず、実態に沿って確認する必要があります。

10人未満の会社でも作成が推奨される理由

常時使用する労働者が10人未満の事業場には、労働基準法上、就業規則を作成して届け出る義務はありません。 ただし、厚生労働省の案内では、10人未満の事業場でも就業規則を作成しておくことが望ましいとされています。

労働時間や休日、賃金、服務規律などをあらかじめ明文化しておけば、労使双方が共通のルールを確認しやすくなり、認識の違いによるトラブル防止にもつながるでしょう。 また、従業員が増えて作成義務の対象となった際も対応しやすくなるため、小規模な事業場でも早めに整備しておくことには実務上のメリットがあります。

就業規則に必ず盛り込む記載事項

就業規則には、労働基準法第89条に基づき、必ず記載しなければならない事項と、制度を設ける場合に記載が必要となる事項があります。 また、記載事項は内容によって区分されているため、それぞれの違いを理解したうえで適切に盛り込むことが重要です。

ここでは、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項に加え、会社が任意で定められる事項について解説します。

絶対的必要記載事項(労働時間・賃金・退職に関する事項)

絶対的必要記載事項は、会社の制度の有無にかかわらず、就業規則へ必ず盛り込まなければならない事項です。 具体的には、始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇、交替制の場合の就業時転換に関する事項などが含まれます。

また、賃金の決定・計算・支払方法、締切日、支払時期、昇給に関する事項についても記載が必要です。 さらに、退職に関する事項には解雇の事由も含まれるため、労働基準法第89条に沿って必要な内容を漏れなく定めなくてはなりません。

相対的必要記載事項(退職金・賞与・懲戒処分など)

相対的必要記載事項は、事業場で該当する制度やルールを設ける場合に、就業規則への記載が必要となる事項です。 例えば、退職手当を設ける場合は対象となる労働者の範囲に加え、金額の決定・計算・支払方法や支払時期を定めます。

また、賞与などの臨時の賃金や最低賃金額、安全衛生、職業訓練などに関する定めも対象です。 さらに、表彰や懲戒などの制度を設ける場合は、その種類や程度について就業規則に記載する必要があります。

任意的記載事項として盛り込みたい項目

任意的記載事項は、法令や労働協約に反しない範囲で、会社が独自に判断して就業規則へ盛り込める事項です。 例えば、就業規則の目的や経営理念、服務に関する考え方などを記載すると、職場で共有したい方針を明確にできます。

ただし、育児・介護休業など、法令上就業規則への記載が必要な事項は、これらの任意的記載事項とは明確に区別しなくてはなりません。 自社の理念を伝える任意の内容と法的な義務事項を正しく整理し、必要な内容を漏れなく就業規則へ盛り込むことが重要です。

就業規則の効力が発生するタイミングと適用範囲

就業規則の効力は、労働基準監督署へ届け出るだけで発生するわけではなく、労働者への確実な周知が不可欠です。 また、法令や労働協約、個別の労働契約との関係によって、規則が適用される範囲が異なる点に注意してください。

ここでは、就業規則がどの範囲で効力を持つのかを整理し、法令・労働協約との関係や効力が発生するタイミングを解説します。

法令・労働協約との優先関係

就業規則に法令や労働協約と矛盾する内容を記載しても、その規定は法的な効力を持ちません。 労働基準法第92条に基づき、法令や労働協約に抵触する項目については、変更を命じられることがあります。

また、労働契約法第13条でも、法令や労働協約に反する就業規則の部分は、労働契約の内容として適用されません。 そのため、就業規則の作成や変更を行う時は、各種法令だけでなく、事業場に適用される労働協約との整合性も確認してください。

労働契約に対する効力

就業規則を従業員へ周知し、合理的な労働条件を定めている場合、その内容は個々の労働契約における共通の基準となります。 ただし、就業規則より好条件を個別に約束している時は、そちらの有利な内容が優先されるでしょう。

一方、就業規則の基準を下回る条件を個別の労働契約で定めても、その部分は無効となり、就業規則の基準が適用されます。 そのため、実際の労働条件を正しく把握する時は、就業規則と個別の労働契約の双方を必ず併せて確認してください。

効力発生の具体的なタイミング

就業規則の効力は労働基準監督署へ届け出た時点で一律に発生するものではなく、労働者への適切な周知が必要です。 また、作成や変更を行う時は届出の前後を問わず、労働者が内容を確認できる状態にしておきましょう。

施行日を定めている場合はその日から効力が生じ、定めていない時は通常、労働者へ周知した日から効力が発生します。 一方、常時10人以上の労働者を雇用する事業場には届出義務があるため、周知と届出をそれぞれ適切に行ってください。

就業規則に関する義務に違反した場合の罰則

就業規則の作成・届出義務に違反した場合や、必要な周知を怠った場合は、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。 特に、常時10人以上の労働者を雇用する事業場では各手続きが法的な義務となるため、適切な対応を忘れないでください。

ここでは、就業規則の作成義務・届出義務・周知義務に違反した場合に、どのような罰則が科されるのかを解説します。

作成義務違反のペナルティ

常時10人以上の労働者を雇用する事業場で就業規則を作成しない行為は、労働基準法第89条違反にあたります。 その場合、同法第120条に基づき30万円以下の罰金が科されるおそれがあるため、対象となる事業場は早急に対応しなければなりません。

また、ルールが未整備のままだと、労働時間や賃金などの判断基準を社内で共有しにくくなる点に注意が必要です。 こうした労使トラブルのリスクを未然に防ぐためにも、常時雇用している労働者数を正しく確認したうえで、適切な就業規則を整備してください。

届出義務違反のペナルティ

常時10人以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則を作成した時だけでなく、内容を変更した時も届出が必要です。 また、この提出を怠ると労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

特に、届出をしていなくても、合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していれば、その内容が労働契約上の労働条件となる場合があります。 そのため、提出の義務と法的な効力の有無はそれぞれ切り離し、別々の問題として正しく整理してください。

周知義務違反のペナルティ

就業規則を従業員へ周知しない行為は労働基準法第106条違反となり、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。 また、合理的な内容の就業規則を従業員へ周知することは、その内容を労働契約の基準とするためにも重要です。

そのため、書類を労働基準監督署へ提出していても、従業員が必要な時に内容を確認できなければ、適切に周知しているとはいえません。 掲示や備付け、書面の交付、電子媒体での共有などを行い、従業員が必要な時に確認できる環境を整えてください。

就業規則の作成・見直しをスムーズに進めるコツ

就業規則の作成や変更を行う時は、最新の法改正や自社の働き方を反映しながら必要な項目を漏れなく整理することが重要です。 また、すべてを自社だけで進めるのではなく、厚生労働省が公開するモデル就業規則や専門家を活用すると作業の負担を抑えられます。

ここでは、就業規則の作成や見直しを効率よく進めるために、モデル就業規則の活用方法や社会保険労務士へ相談するメリットを解説します。

厚生労働省のモデル就業規則を活用する

厚生労働省のモデル就業規則は、必要な規程例や解説を確認しながら、自社の就業規則を作成する際の参考資料として活用できます。 また、始業・終業時刻や賃金、退職などの記載事項が整理されているため、初めて作成する場合でも必要な内容を確認しやすいでしょう。

ただし、そのまま使用するのではなく、自社の実情に合わせて内容を調整することが重要です。 法改正に対応した内容も確認できるため、作成時だけでなく既存の就業規則を見直す際にも役立ててください。

社会保険労務士に依頼するメリットと費用相場

社会保険労務士へ依頼すると、労働関係法令を踏まえながら、自社の雇用形態や働き方に合わせた就業規則を整備できます。 また、法改正への対応や条文の見直しについて専門的な助言を受けられるため、自社だけで作成する時より負担を抑えられるでしょう。

例えば、新規作成は15万~30万円前後、部分的な変更は5万円程度からが費用の目安ですが、依頼内容によって金額は異なります。 全面改定は15万~25万円程度の料金例もあるため、依頼前に各事務所へ見積もりを依頼してください。

定期的な見直しで法改正に対応する

就業規則は一度作成して終わりではなく、労働関係法令の改正や社内制度の変更に応じて内容を見直すことが重要です。 また、育児・介護休業などの制度に変更があった時は、以前の内容では実務と合わなくなるおそれがあります。

特に、法改正の最新情報や施行時期を把握し、自社の勤務形態や休暇制度にズレがないか定期的に確認するとよいでしょう。 制度の形骸化を防ぐためにも専門家の助言を参考にし、現状に即した規則を維持できる社内体制を整えてください。

まとめ:就業規則の作成義務を正しく理解しよう

就業規則は常時10人以上の労働者を雇用する事業場で作成や届出が必要となり、従業員への適切な周知も欠かせません。 また、労働時間や賃金などの必要事項を正しく記載し、法令や事業場に適用される労働協約との整合性を確認することも重要です。

特に、作成後も最新の法改正や社内制度の変更に応じて内容を見直し、実際の働き方に合った規則を維持する必要があります。 厚生労働省のモデル就業規則や専門家を活用しながら、義務や手続きを正しく理解し、自社に合った労務管理体制を整えてください。

HRプラス社会保険労務士法人では、法令や行政通達、労働判例などを踏まえ、企業ごとの状況に応じた就業規則の作成・見直しを支援しています。 作成義務の有無や届出方法に迷っている場合、法改正後の内容を反映できているか不安な場合のご相談も受け付けております。

就業規則の整備や労務トラブルの予防を検討している方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

コラム監修者

特定社会保険労務士

佐藤 広一(さとう ひろかず)

お問い合わせ

<資格>

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 13000143号

東京都社会保険労務士会 会員番号 1314001号

<実績>

10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
アイティメディア株式会社(東証プライム:2148)
取締役(監査等委員)
株式会社ダブルエー(東証プライム:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社エージェントグロー 取締役
経営法曹会議賛助会員

<著書・メディア監修>

『M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
『図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
『管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上

TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演