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公開日:2026.04.13

更新日:2026.04.13

労働基準監督署の監査が入る理由は?3つのきっかけと対策を徹底解説!

労働基準監督署の監査が入ると、突然の連絡や来署要請で慌てがちです。
しかし、目的と権限、入りやすい理由、当日の確認ポイントを押さえれば、必要以上に不安になる必要はありません。

本記事では、監督署が確認する法令の観点を踏まえ、申告や定期監督、法改正対応、再監督といった代表的な契機、準備すべき書類、よくある指摘と是正対応などを解説します。

労働基準監督署による監査の目的と権限とは

労働基準監督署による監査は、企業が労働基準法などの関係法令を遵守しているかを確認し、労働者の権利と安全を守るために実施されます。
監督官には立ち入り調査や書類確認、関係者への聴取などの権限が与えられており、違反があれば è正指導や告発が行われることもあります。

以下では、組織の役割や具体的な監査対応のポイントを見ていきましょう。

そもそも労働基準監督署とはどのような組織か

労働基準監督署は、労働基準法や労働安全衛生法などの関係法令に基づき、企業の労働条件や安全衛生体制を監督する行政機関です。

厚生労働省の出先機関として全国に設置され、労働時間や賃金の支払い状況、労働災害防止措置などが適正に行われているかを確認します。
労働基準監督官が立ち入り検査や書類調査を行い、違反があれば是正勧告や指導を実施します。

労働基準監督官が持つ法的権限と逮捕の可能性

労働基準監督官は、労働基準法に基づき事業場へ立ち入り、帳簿や就業規則などの提出を求め、関係者へ質問できる権限を有しています。
違反が確認された場合は是正勧告や指導を行い、改善が見られないときは送検手続きに進むこともあります。

逮捕が行われるのは、悪質な法令違反や命令違反、虚偽報告など重大なケースに限られるのが一般的です。
是正されない重大・悪質な事案では、司法処分として送検されることがあるため、法令軽視は企業にとって大きなリスクとなります。

会社は監査の受け入れを拒否することはできるのか

労働基準監督署による監査は法令に基づくものであり、原則として企業が立ち入りや書類確認を拒むことはできません。
正当な理由なくこれを拒否した場合、法令違反として罰則の対象となる可能性があります。
そのため、日頃から労働条件の整備や書類管理を徹底し、監査には誠実に対応する姿勢が重要です。

なぜ来る?労働基準監督署が監査に入る3つのきっかけ

労働基準監督署の監査は、一定のきっかけに基づき、事前に連絡がある場合もある一方、適正な調査のため予告なく事業場に立ち入ることもあります。
主な契機は、従業員や退職者からの申告、定期監督としての抽出調査、法改正対応や再監督の確認です。

以下で、具体的に見ていきましょう。

従業員や退職者からの申告(通報)による場合

従業員や退職者からの申告は、監査が始まる代表的なきっかけです。

労働者は、長時間労働や未払い残業代、各種ハラスメントなどの問題を感じた場合、監督署へ相談や通報を行うことができます。
監督署は内容を精査し、必要と判断すれば立ち入り調査を実施します。

定期監督としてのランダムな抽出や計画的な調査

定期監督は、特定の問題がなくても法令遵守状況を確認するために計画的に行われます。
業種や地域などを踏まえた抽出や、ランダム選定によって対象企業が決まります。

調査で確認される基本事項は、労働時間や賃金台帳、就業規則、安全衛生体制などです。
重大な違反がなくても管理体制の不備があれば是正指導の対象となります。

法改正への対応確認や再監督による調査

法改正への対応確認や再監督も、重要な監査理由です。
監督署は、新制度への対応状況を確認するために調査を行うことがあります。
また過去の監査で是正勧告を受けた企業に対しては、改善状況を確認する再監督が実施されることも覚えておきましょう。

労働基準監督署の監査には大きく分けて4つの種類がある

労働基準監督署の監査は一律ではなく、目的や背景に応じて複数の種類に分かれています。
代表的なのは、定期監督、申告監督、災害時監督、そして再監督です。
それぞれ確認事項や重点項目が異なり、企業の労務管理体制を多角的に点検します。

以下で、具体的に整理します。

定期監督:計画的に行われる一般的な調査

定期監督は、労働基準監督署が計画的に実施する一般的な監査です。
特定の通報がなくても、業種や地域などを踏まえて選定されることがあります。

調査では、労働時間管理や賃金計算、就業規則の整備状況など基本的な労務管理体制が確認されます。

申告監督:特定の通報に基づいて行われる調査

申告監督は、従業員や退職者などからの具体的な通報を契機に実施される監査です。
未払い残業代や長時間労働、各種ハラスメントなどの申告内容が精査され、必要に応じて立ち入り調査が行われます。
調査では、労働時間の実態や賃金支払い状況など通報に関連する事項が重点的に確認されます。

災害時監督と再監督:事故発生時や是正確認の調査

災害時監督は、労働災害や重大事故が発生した際に実施される調査です。
事故原因の究明や安全管理体制の確認が行われ、再発防止策の徹底が求められます。
一方、再監督は過去の監査で是正勧告を受けた企業に対し、改善状況を確認する目的で行われます。

労働基準監督署の監査当日の流れと準備すべき必要書類

労働基準監督署の監査当日は、企業の労務管理体制が具体的に確認される重要な機会です。
事前通知の有無にかかわらず、当日の流れと必要書類を把握しておくことで、落ち着いた対応が可能になります。

以下では、具体的な流れと書類を確認していきましょう。

調査の事前予告から当日の立ち入り検査までのステップ

監査は事前に電話や書面で通知されることが多いものの、予告なく実施される場合もあります。
通知があれば、対象期間や確認事項を踏まえて帳簿や規程を点検する時間が確保できるでしょう。

当日は監督官が事業場へ立ち入り、担当者へのヒアリングや書類確認を行います。
労働時間管理、賃金計算、就業規則の内容などが重点的に確認され、必要に応じて現場確認も実施されます。

賃金台帳や出勤簿など必ず求められる法定三帳簿

監査で必ず確認されるのが、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿のいわゆる法定三帳簿です。
これらは労働基準法で作成・保存が義務付けられている重要書類です。
不備や未整備があると、是正指導の対象となる可能性があります。

就業規則や36協定届などその他に用意すべき書類一覧

法定三帳簿に加え、就業規則や36協定届も重要な確認書類です。
36協定届は時間外労働を行う際に必要な協定で、労働基準監督署への届出が必要です。

さらに、労働条件通知書や安全衛生関連書類なども確認対象となります。

労働基準監督署の監査でよく指摘される違反事例と是正勧告

監査では、労働基準法に基づく基本的な労務管理が適切に行われているかが重点的に確認されます。
特に多いのが、労働時間管理の不備や残業代の未払い、36協定に関する違反です。

以下では、具体的な違反事例と対応方法を解説します。

労働時間管理の不備と残業代の未払いに関する指摘

労働時間管理の不備や残業代の未払いは、監査で最も多く指摘される事項の一つです。
出退勤時刻の記録が曖昧であったり、実労働時間と賃金計算が一致していなかったりする場合、法令違反と判断される可能性があります。

適切な勤怠管理体制を整備し、実態に基づいた賃金支払いを行うことが不可欠です。

36協定の未締結や長時間労働に対する è正指導

36協定を締結せずに時間外労働を行わせている場合や、上限規制を超える長時間労働が確認された場合も是正指導の対象です。

上限時間を超過している場合は、速やかな改善措置が求められます。
長時間労働は健康障害のリスクも伴うため、監督署は厳格に確認します。

是正勧告書を受け取った後の対応と是正報告書の提出

是正勧告書を受け取った場合は、まず指摘内容を正確に把握し、違反事項ごとの対応策を整理します。
勧告には改善期限が示されるため、具体的な是正計画と実施スケジュールを策定することが重要です。

必要に応じて、就業規則の改訂や勤怠管理方法を見直し、改善措置を講じた後は、是正報告書を作成して期限内に提出してください。

労働基準監督署の監査に備えて日常的に行うべき対策

監査は突然実施されることもあるため、日常的な備えが企業リスクの軽減につながります。
特に重要なのは、労働時間の適正管理、就業規則の整備、法令改正への対応体制の構築です。

以下で、具体的な対策を整理します。

勤怠管理システムの導入と適正な労働時間の把握

適正な労働時間管理は、監査対策の基本です。
勤怠管理システムを活用することで、出退勤時刻や残業時間を客観的に記録でき、実労働時間との乖離を防げます。
日常的にデータを点検し、過重労働の兆候を早期に把握する体制を整えること大切です。

就業規則の定期的な見直しと最新法令への対応

就業規則は企業の労務管理の基盤であり、最新法令に適合していることが不可欠です。
労働時間制度、休暇規定、懲戒規定などは特に確認対象となります。

定期的な見直しを行い、必要に応じて専門家の助言を受けることが大切です。

社内相談窓口の設置による労務トラブルの未然防止

社内相談窓口の設置は、労務トラブルを早期に把握する有効な手段です。
従業員が外部機関へ直接通報する前に社内で問題を共有できれば、迅速な是正が可能になります。

問題の芽を早期に把握し改善する姿勢が、監査リスクの抑制と職場環境の向上につながります。

まとめ:労働基準監督署の監査理由とは

労働基準監督署の監査は、申告や定期監督、法改正対応、再監督などの契機で実施され、労働時間管理や賃金支払い、就業規則、安全衛生体制といった基本事項が確認されます。
法定三帳簿や36協定届を整備し、説明担当者と提示手順を決めておけば、当日も落ち着いて対応できます。

指摘が出た場合は是正計画を立て、期限内に是正報告書を提出することが重要です。
勤怠データの点検や相談窓口の整備など、平時の運用改善が最大の監査対策になります。
正当な理由なく調査を拒んだり虚偽報告をしたりすると、罰則対象となる可能性もあるため注意しましょう。

コラム監修者

特定社会保険労務士

佐藤 広一(さとう ひろかず)

お問い合わせ

<資格>

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10年以上にわたり、220件以上のIPOサポート
社外役員・ボードメンバーとしての上場経験
※2024年支援実績:労務DD22社 東証への上場4社
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株式会社ダブルエー(東証プライム:7683)
取締役(監査等委員)
株式会社エージェントグロー 取締役
経営法曹会議賛助会員

<著書・メディア監修>

M&Aと統合プロセス 人事労務ガイドブック』(労働新聞社)
図解でハッキリわかる 労働時間、休日・休暇の実務』(日本実業出版社)
管理職になるとき これだけはしっておきたい労務管理』(アニモ出版)他40冊以上

TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』監修
日本テレビドラマ『ダンダリン』監修
フジTV番組『ノンストップ』出演